音楽と音声劇と絵画で表現するふたつの世界の物語。
記されたのは古の伝承なのか、それとも―
その書物が閉ざされるとき、真実はこの森へ。 enmanrikon.org

※当作品では神話に出てくる2つの国を、〔ニフルヘイム〕と〔ミッドガルド〕と発音しています。

そこは深い森の奥、ニフルヘイム。
人間の住む世界ミッドガルドでは、『真っ暗い霧と氷の国』としてその存在を畏れられていました。
その、光りさえ届かないニフルヘイムの森のなかで唯一、天上からほのかに灯かりを受け、穢れなき神水が流れ満ちる湖畔に、大きなおおきな一本の樹木がありました。
その樹木に水をやるのは髪の長い少女。泉の水をすくい、ふりかけます。
　そうすることで生まれる糸を紡ぐのでした。

『むかしむかしのこと、それは小さな国のお話。
　仲の良い王様と王妃様、二人にとても可愛い女の子が授かりました。
　それは美しいお姫様に成長し、やがてひとりの青年に想いを寄せるのでした。』

人間の世界に住む少年は、就寝前にお話を聞かせてくれる優しい母親が大好きでした。

少年はいつも夢を見ました。それはとてもとても、素敵な夢でした。
大好きな母親に夢の話をしようと思うと、なぜか目が覚めた瞬間に忘れ、覚えていられないのでした。